2023, 8月 30 日

エクアドル調査遠征 2023

国際的に著名なジャーナリストで作家でもあるロビン・スウィジンバンクは、マンタトラストとの提携によって現在進行している調査遠征についての洞察を皆さんと共有するために、船上の日々のルーティーンに参加し、最新の結果をモルディブから直接伝えてくれます。

2023年マンタトラストとのパートナーシップによる現在進行中の調査遠征で明らかになったことを皆さんと共有するために、国際的に著名なジャーナリストで作家でもあるジェイソン・ヒートンが船上の日々のルーティーンに参加し、最新の結果をエクアドルから直接伝えてくれます。彼の最新報告をご覧ください。

中間報告最終回 2023年9月3日


回遊性生物のマンタは普段、栄養豊富な寒流に乗って世界中の海を長距離移動します。  そのため、国境など意に介せず、ある国の領海から別の国の領海へと日常的に移動しています。同様に、マンタトラストにも国境は無く、世界各地から研究者が集まっています。今年のマンタ調査エクアドル遠征には、ペルー、メキシコ、コスタリカ、アメリカ、イギリスから参加者が集まり、文化、科学分野、国籍のるつぼと化しています。エクアドル国内でも、ガラパゴス諸島や、この数週間チームが拠点を置いていたプエルト・ロペスから研究者が来ています。

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この国際色豊かなチームは意図的に構成されたものです。科学とは、本質的に共同作業ですが、孤立することもあります。研究が局所的に行われている場合、全体像を見失いがちで、研究者が最善のものと思っていても、他国で同様のプロジェクトに取り組んでいる同僚と重複したり、重要なつながりを見逃したりすることもあります。マンタトラスト創設者ガイ・スティーブンスは、包括的事業体を設立した10年以上前にこれに気づいていました。そこで、国境を越えたネットワークをまとめ、その目的はすべて研究を進め、絶滅の危機に瀕しているマンタの個体数をより一層保護することでした。

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研究者全員が、異なる経験と専門知識をこの遠征に持ち込んでいます。ペルーのマンタプロジェクトから来たステファニーは、自国沖の濁った海域でマンタを観察する難しさを語り、メキシコのイトマキエイ保護プロジェクトから来たマルタは、カリフォルニア湾で地元の漁師と協力してイトマキエイを見つけ、タグを付ける方法を説明します。現地エクアドルでは、マンタプロジェクト・エクアドルを監督するミシェル・ゲレーロが、地元の知識とマンタの固有個体群に精通していることから、私たちの遠征では事実上のホストです。

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こういった研究者たちが集まって示された協力の精神と、確固たる情熱を目の当たりにするのは刺激的でした。このような国際的な遠征は、マンタトラストチームが広範囲に招集され、共有するのに極めて貴重な方法です。カール F. ブヘラはこの事業全体を資金面での支援によって、可能にしていることを誇りに思います。チームが解散して、それぞれの国やプロジェクトに戻るとき、彼らは間違いなくエクアドルで学んだことだけでなく、新たな目的意識とインスピレーションを持ち帰ることでしょう。しかし、今回の遠征で真の成功者はマンタ自身でしょう。

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中間報告第2回 2023年8月31日


マンタのような謎めいた捉えどころのない巨大海洋生物の研究には、人間による観察、研究室での作業、データ分析のバランスが必要とされます。また、テクノロジーにも大きく依存しています。当然、これにはマンタトラストチームがここエクアドルの海中で何時間も使用するエアシリンダー、レギュレーター、フィン、浮力調整装置といったダイビング用具も含まれます。さらにボートにも、革新的な専用ツール一式が揃い、その能力と特殊性には目を見張るものがあります。

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マンタ研究者だけでなく、海洋生物学者の間で一般的なツールは、おそらく槍の先に付いているものでしょう。音響タグと衛星タグは、取り外し可能なチップを使ってマンタの皮下に埋め込まれます。熟練ダイバーが、手持ち式のハワイアンスリング(ゴムバンドのみを動力源とするシンプルな水中銃)を使って打ち込みます。音響タグは、マンタに装着されると振動を発信し、それを岩礁に設置された水中受信機が探知します。受信機は定期的に回収され、データがダウンロードされます。これにより、タグ付けされた動物の動きが地図上で一連の点になるので、研究者はその移動を追跡し、他のデータ地点と連携して結論を導き出すことができます。衛星タグも同様に装着されますが、水深や水温などより詳細な情報を得ることができます。タグがマンタから外れて海面に浮上した時点で収集されたデータは、次に衛星と接続されます。

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組織採取にも汎用性の高いハワイアンスリングを使いますが、マンタに埋め込むのではなく、特殊な先端の針で組織片を採取し、分類されて研究室に送り精査します。生物学的指標からDNA分析まであらゆる検査が行われ、海洋のさまざまな場所のマンタとその形態の違いを比較するために使用されます。 この海の巨人の体盤幅を測定するために、マンタトラストチームは、ステレオビデオ写真測量(SVP)と呼ばれる高度なデュアルカメラシステムを利用しています。手持ち式フレームに取り付けたレーザーとワイドセットのGoProカメラを使って、SVPは体盤幅の端から端までの正確な長さを三角測量することができます。これを過去の測定値や他の動物と比較すれば、マンタの年齢を推定するために使われます。このシステムはかなり高精度なので、取り扱いには注意を要し、頻繁に調整しなければなりません。

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もちろん、最も基本的なデータ収集の方法は写真撮影で、ダイバーはほとんど全員が、GoProから大型デジタル一眼レフシステムに至るまで様々なデジタルカメラを所持しています。慎重に構成されたマンタの腹部の写真には、生殖器だけでなく、重要な皮膚の斑紋も写っています。研究者の写真は、科学者やアマチュアダイバーなど他の無数のダイバーがアップロードした写真と組み合わされ、画像データベースに読み込まれた後、個々のマンタを正確に識別するために入念に分類され、関連性を探ります。 先週、新しいタイプのシステムが、プラタ島沖ですでに知られているマンタクリーニングステーションに導入されました。「アイズ・オン・ザ・リーフ(岩礁の目)」という リモートタイムラプスカメラは、一度に数日間、一定の間隔で写真を撮影します。これにより24時間年中無休で岩礁を見ることができるので、1日に1、2回潜水しながら1時間程度しか観察できない研究者にとっては大きな利点になります。その後、カメラを回収し、映像を確認します。

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マンタトラストチームが使用する最も魅力的なツールは、非接触型水中超音波スキャナーでしょう。その名の通り、この携帯型のデバイスは水を非接触媒体として、妊娠中のマンタをスキャンしてまだ子宮内にいる胎児を観察することができます。このスキャナーを使用するには、ダイバーはマンタから約10センチ以内に近づかねばならないので、非常に高度な技術が要求されることは想像に難くありません。すべてがうまくいけば、結果は本当にエキサイティングです。 これほどの素晴らしい技術も、それを使う研究者のスキルと知性がなければ何の意味もありません。マンタトラストはエクアドルでの遠征のために、この分野で最高のものを集め、そのすべてにカール F. ブヘラが出資しています。その結果、画期的な学術知識が生み出されており、マンタ研究の未来は明るいようです。

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中間報告第1回 2023年8月22日


太平洋は、あらゆる意味で最高の場所です。地球上最大、最深の海で、地球の30%を覆っています。ですから、太平洋に最大の生物が生息しているのは不思議ではありません。この青いフロンティアで、ボートから背中を向けて飛び込むと何が見えるでしょう。クジラ、サメ、シャチ、マンボウ、あるいは私たちがここエクアドルにいる理由、マンタでしょうか。しかし穏やかな巨人でさえ、これほど広大なフロンティアで見つけることは、ことわざにあるように干し草の山で針を探すようなものです。それでも、チャンスがある場所はいくつかあるので、マンタトラストチームは小さな漁村プエルトロペスから北西に40キロ離れた無人島、プラタ島にやって来ました。

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マンタトラストの研究者たちが過去に行った調査のおかげで、島周辺の海域は地球上で最も多くのマンタが見られる場所だということが分かっています。南半球の冬の終わりには、栄養豊富な冷たいフンボルト海流の上昇流に乗って、この堂々たる巨大生物が何百枚も通過します。しかし今季は今のところ、エルニーニョ現象とおそらく気候変動の影響で、水温が通常よりもずっと高くなっています。ダイビング初日の調査は収獲なしでした。「クリーニングステーション」という有望な場所で2度潜りました。ここはマンタが集まりやすく、共生関係にある小魚がマンタの寄生虫を取り除く場所です。ここでは、音響タグと衛星タグを取り付け、組織生検を行い、大きさを測定し、写真で識別することを期待していました。しかし摂氏26度の水温では、通過する個体は皆無です。自然はスケジュールにも願望にもお構いなしなので、私たちは待ち、期待するだけです。

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とはいえ、この日のダイビングが悪かったわけではありません。1本目のダイビング中、ザトウクジラの耳に残る鳴き声が丸1時間聞こえていましたが、姿は見えませんでした。往復のボートでも、クジラが水面に飛び出したり弧を描いたりするのを見ました。水中で鳴き声を聞いたのと同じペアだったのでしょうか?何とも言えません。スティング・レイが動き回る海底の辺りはトゥンベスと呼ばれる場所で、隙間にはウツボ、イソギンチャク、好奇心旺盛なタコがいて、速い海流に逆らってカラフルな魚の群が渦巻いていました。ことわざにもあるように、海には他の魚がいる(チャンスはいくらでもある)のです。まだまだダイビングは続きますから、私たちはフンボルト海流が冷水の蛇口をひねって、マンタを連れてくるのを待つことにします。

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長期的パートナーシップ

 

私たちはマンタの保護とこの素晴らしい(そして絶滅の危機にさらされている)生き物が生存できる生態系の保護を目的としたNPO団体マンタトラストとの長期にわたるパートナー関係を誇りに思っています。資金の一部に「パトラビ スキューバテック スペシャルエディション」からの収益を充当して、以下のような活動で毎年プロジェクトを支援しています。重要な移動コリドーの特定(太平洋メキシコ、2015年);映画「How to Swim with Mantas (マンタと一緒に泳ぐには)」(2016年);興味深いタイトルの研究 「健康は食にあり - 巨大生物の餌場を探究」(2017年); モルディブ海洋教育プログラム(2018年)、影を求めて:カリブ海のブラックマンタの謎に迫る (2019年);洋上調査基地への資金提供をした「絶好の機会」(2020年)。

 

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